VPNを繋いだらネットが劇的に遅い!海外ホテルのWi-Fiで速度を改善する7つの裏技

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海外旅行や出張の夜、ホテルの部屋で一息つきながら日本のドラマを見ようとしたり、家族とビデオ通話をしようとしたり。そんな時、頼りになるのがホテルのWi-Fiですよね。しかし、セキュリティのためにVPNをオンにした瞬間、「あれ…?動画がカクカクする」「ページの読み込みが全然終わらない!」と、劇的にネットが遅くなった経験はありませんか?

こんにちは!世界中を旅しながら大学生と仕事をしている、旅行ライターのHです。

私も以前、タイのホテルで現地のフリーWi-FiにVPNを繋いだ途端、仕事のファイルが全くダウンロードできなくなり、頭を抱えたことがあります。「安全は確保したい、でも速度も譲れない!」 このジレンマは、海外でインターネットを使う多くの人が直面する大きな悩みだと思います。

なぜVPNを繋ぐと速度が落ちてしまうのか?そして、そのイライラするような遅さを解消する方法はないのか?

ご安心ください。いくつかの「裏技」を知っていれば、VPNによる速度低下を最小限に抑え、海外ホテルのWi-Fiを快適に利用することが可能です。この記事では、VPNでネットが遅くなる根本的な原因から、誰でも簡単に試せる7つの具体的な速度改善策まで、私の経験を交えながら徹底的に解説していきます。

この記事を読み終える頃には、あなたは「VPN=遅い」というイメージを覆し、海外でも安全かつ快適なインターネット環境を自分で構築できるようになっているはずです。

なぜVPNを繋ぐとネットは遅くなるのか?根本原因を知ろう

改善策に取り組む前に、まずは「なぜVPNを使うと通信速度が落ちるのか」という根本的な原因を理解しておきましょう。原因がわかれば、対策も立てやすくなります。難しく考えず、「なるほど、そういう仕組みなんだ」とイメージを掴んでみてください。

VPN(Virtual Private Network)は、インターネット上に仮想的な専用トンネルを作り、そこを通るデータを暗号化することで、通信の安全性を高める技術です。この「トンネル」と「暗号化」が、速度低下の主な原因となります。

主に、以下の3つの理由が挙げられます。

  1. 暗号化・復号の処理による負荷 パソコンやスマートフォンから送られるデータは、VPNによって複雑な暗号に変換されます。そして、VPNサーバーを経由し、最終的に目的のサイトに届く前には、その暗号が解読(復号)されます。この「暗号化」と「復号」という作業には、どうしてもマシンのパワーと時間が必要になります。これが一つ目の速度低下の要因です。
  2. 通信経路が長くなる(物理的な距離) VPNを使うと、あなたの通信は一度、世界中のどこかにある「VPNサーバー」を経由します。例えば、あなたがロンドンのホテルから日本の動画サイトを見たい場合、通信データは「ロンドンのホテル → 日本のVPNサーバー → 日本の動画サイト」という長い道のりを旅します。直接接続するよりも明らかに遠回りになるため、その分だけ時間がかかってしまうのです。
  3. VPNサーバー自体の混雑 あなたが利用しているVPNサーバーに、同時にたくさんの人が接続していると、回線は混雑してしまいます。特に、無料で利用できるVPNサービスや、利用者の多い人気サーバーでは、回線の渋滞が起こりやすく、それが速度低下に直結します。

これらVPN自体の特性に加えて、「海外ホテルのWi-Fiがそもそも遅い」という問題も大きく影響します。ホテルのWi-Fiは、多くの宿泊者で1つの回線を共有しているため、夜間など利用者が集中する時間帯は特に速度が落ちがちです。

つまり、「もともと遅いことがあるホテルのWi-Fi」に、「仕組み上どうしても少し遅くなるVPN」を組み合わせることで、体感として「劇的に遅い!」と感じてしまうわけです。

しかし、原因がわかっていれば対策は可能です。次の章で、この状況を打破するための具体的な裏技を見ていきましょう。

【実践編】VPN速度を改善する7つの裏技

ここからは、いよいよ実践編です。ITに詳しくない方でも簡単に試せるものから順番にご紹介します。上から一つずつ試していくだけで、多くの場合で速度の改善が見込めます。

裏技1:【最重要】接続するVPNサーバーの場所を変える

これが最も簡単で、最も効果的な方法です。前述の通り、通信速度はVPNサーバーとの物理的な距離に大きく影響されます。

  • 基本は「現在地に一番近いサーバー」を選ぶ もしあなたがドイツに滞在しているなら、VPNアプリのサーバーリストから「ドイツ」や、近隣の「フランス」「オランダ」などを選んで接続してみてください。通信の移動距離が短くなるため、速度が大幅に改善される可能性が高いです。多くのVPNアプリには、自動で最適な(最速の)サーバーに接続してくれる機能もあるので、まずはそれを試すのが良いでしょう。
  • 「日本のサイトを見たい時」は日本のサーバーを選ぶ ただし、TVerやU-NEXTなど、日本国内からしかアクセスできないサービス(ジオブロックされているサービス)を利用したい場合は、日本のVPNサーバーに接続する必要があります。この場合は、日本のサーバーの中でも、利用者が比較的少なそうな地方のサーバー(例えば東京ではなく大阪など)を選んでみると、少し改善することがあります。

まずはサーバー変更。これが鉄則です。

裏技2:VPNのプロトコルを変更してみる

少し専門的に聞こえるかもしれませんが、心配はいりません。「プロトコル」とは、簡単に言えば「通信を行う上でのルールや手順」のことです。多くのVPNアプリでは、このプロトコルを設定画面から簡単に切り替えることができます。料理でいう「調理法」のようなもので、調理法を変えれば仕上がりが変わるように、プロトコルを変えれば通信の速度や安定性が変わるのです。

代表的なプロトコルには、以下のようなものがあります。

【VPNプロトコル別 特徴比較表】

プロトコル名速度セキュリティ安定性おすすめの用途
WireGuard◎ 速い◎ 高い〇 安定動画視聴、大容量ファイルのダウンロードなど速度重視の場合
IKEv2/IPsec〇 やや速い◎ 高い◎ 非常に安定スマートフォンでの利用、Wi-Fiとモバイル回線の切り替えが多い場合
OpenVPN (UDP)〇 標準◎ 高い〇 安定速度と安定性のバランスが良く、幅広い用途に使える
OpenVPN (TCP)△ 遅い◎ 高い◎ 非常に安定通信が不安定なネットワークで、確実性を最優先したい場合

【実践のポイント】 まずは、VPNアプリの設定画面を開き、「プロトコル」という項目を探してみてください。現在「自動」や「OpenVPN」に設定されている場合は、「WireGuard(ワイヤーガード)」に変更してみましょう。WireGuardは比較的新しいプロトコルで、高速通信に定評があります。多くの場合、これだけで速度が劇的に改善されます。NordVPNの「NordLynx」やExpressVPNの「Lightway」のように、VPNサービスが独自にWireGuardをベースとして開発した高速プロトコルも存在します。

裏技3:可能であれば有線LANに接続する

Wi-Fiは便利ですが、電波で通信する以上、壁などの障害物や他の電波との干渉によって不安定になりがちです。もし、ホテルの部屋のデスク周りにLANポート(四角い差し込み口)があれば、チャンスです。

有線LANは、Wi-Fiに比べて通信が安定しており、速度も速いことがほとんどです。持参したLANケーブルで、パソコンとLANポートを直接繋いでみましょう。最近の薄型ノートパソコンにはLANポートがない場合も多いので、その際は「USB-LAN変換アダプタ」を一つ持っておくと、いざという時に非常に役立ちます。私も旅行の際は、必ずカバンに短いLANケーブルと変換アダプタを忍ばせています。

裏技4:Wi-Fiの周波数帯を変える(5GHz帯に接続)

ホテルのWi-Fiリストを見たときに、「Hotel-WiFi」と「Hotel-WiFi-5G」のように、似た名前のネットワークが2つ表示されることがあります。これは、Wi-Fiが使う電波の**「周波数帯」**が違うことを示しています。

  • 2.4GHz帯: 障害物(壁や床)に強く、電波が遠くまで届きやすい。しかし、速度は遅めで、電子レンジなど他の家電と電波が干渉しやすい。
  • 5GHz帯: 障害物に弱く、電波の届く範囲は狭い。しかし、通信速度が速く、他の電波との干渉が少ない。

もしWi-Fiルーターが近くにある部屋なら、迷わず5GHz帯(名前に「-5G」や「-A」と付いていることが多い)に接続しましょう。それだけで速度が改善することがよくあります。

裏技5:利用する時間帯を変えてみる

これは非常に原始的な方法ですが、効果は絶大です。ホテルのインターネット回線は、宿泊者全員で共有する一本のパイプのようなものです。みんなが一斉に水を飲もうとすれば、一人当たりの水の量は少なくなりますよね。

インターネット利用が集中する夜20時〜24時頃や、チェックアウト前の朝の時間帯は、回線が最も混雑します。もし可能であれば、こうした時間帯を避けて、比較的利用者が少ない日中や深夜に重要な通信を行うようにスケジュールを調整してみましょう。

裏技6:「スプリットトンネリング」機能を使う

これは少し高度なテクニックですが、非常に便利な機能です。「スプリットトンネリング(Split Tunneling)」とは、VPNを経由する通信と、VPNを経由しない通信(直接インターネットに接続する通信)を、アプリやウェブサイトごとに分けることができる機能です。

例えば、

  • セキュリティが重要な通信: Webブラウザでの検索、メールの送受信、ネットバンキング → VPNを経由させる
  • 速度が重要な通信: 動画配信サービス(Netflixなど)、大容量ファイルのダウンロード → VPNを経由させない

というように設定できます。これにより、全ての通信をVPNに通す必要がなくなり、全体のパフォーマンス低下を防ぐことができます。多くの大手VPNサービス(NordVPN, ExpressVPN, Surfsharkなど)がこの機能を提供しています。アプリの設定から「スプリットトンネリング」や「分割トンネリング」といった項目を探して設定してみてください。

裏技7:【最終手段】利用するVPNサービス自体を見直す

上記の6つの方法を試しても改善しない場合、それはあなたが利用しているVPNサービス自体の品質に問題があるのかもしれません。特に無料のVPNサービスは、サーバーの数が少なかったり、インフラが脆弱だったりするため、速度が出にくい傾向にあります。

快適な速度と高いセキュリティを両立させたいのであれば、信頼できる有料VPNサービスへの乗り換えを検討することをおすすめします。有料サービスを選ぶ際は、以下のポイントをチェックすると良いでしょう。

  • サーバー数と設置国: サーバー数が多く、世界中に分散しているほど、接続先の選択肢が増え、快適なサーバーを見つけやすくなります。
  • 通信速度と独自プロトコル: WireGuardなどの高速プロトコルに対応しているか、あるいはサービス独自の高速プロトコル(NordLynx, Lightwayなど)を提供しているか。
  • 返金保証制度: 多くの有料VPNには30日間程度の返金保証期間があります。実際に海外で使ってみて、速度に満足できなければ返金してもらえるので、安心して試すことができます。

そもそも海外でVPNはなぜ必要?セキュリティの重要性を再確認

ここまで速度改善の話をしてきましたが、「そもそも、そんなに面倒ならVPNを使わなくてもいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、海外のフリーWi-Fiを利用する上で、VPNはあなたの情報を守るための命綱です。

ホテルのWi-Fiをはじめ、空港やカフェで提供されているフリーWi-Fiは、セキュリティが非常に脆弱なものが多く、悪意のある第三者によって通信内容を盗み見(盗聴)されるリスクが常にあります。もし暗号化されていない通信でクレジットカード情報やパスワードなどを入力してしまったら、それらが丸ごと盗まれてしまう危険性があるのです。

VPNは、あなたの通信をすべて暗号化することで、こうした脅威から個人情報を守ってくれます。少し速度が落ちるというデメリットはありますが、それ以上に**「情報を守る」というメリット**の方がはるかに大きいのです。

まとめ

海外ホテルでの「VPNが遅い!」問題は、多くの旅行者が直面する共通の悩みです。しかし、その原因を理解し、正しい対策を講じれば、安全性と快適さを両立させることは十分に可能です。

今回ご紹介した7つの裏技を、もう一度おさらいしましょう。

  1. 【最優先】VPNサーバーを現在地に近い場所に変更する。
  2. プロトコルを高速な「WireGuard」などに変更する。
  3. 可能なら有線LANに接続する。
  4. Wi-Fiの5GHz帯に接続する。
  5. 混雑する時間帯を避けて利用する。
  6. スプリットトンネリングで通信を使い分ける。
  7. 高速な有料VPNサービスへの乗り換えを検討する。

海外に行かれる際は、ぜひこのリストをブックマークして、上から順番に試してみてください。まずは最も簡単な「サーバーの変更」から始めるだけで、世界が変わって見えるかもしれません。

正しい知識と少しの工夫で、海外でのインターネットライフはもっと安全で、もっと快適になります。この記事が、あなたの旅の助けとなることを心から願っています。


参照文献

  • NordVPN. 「VPNの速度を上げるには?スピードを上げる12の方法」. 企業ブログ. 参照2025-08-14.
  • ExpressVPN. 「VPN速度を向上させる方法」. 企業ブログ. 参照2025-08-14.
  • 株式会社イード. 「VPNが遅いと感じる原因と自分でできる改善方法|通信速度を上げるには?」. IID. 参照2025-08-14.

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